アップルはソニー化しつつあるのか?

ちきりん氏のエントリー「研究者・勝負師・芸術家」を読んで、岡田斗司夫の人間には4タイプあるという説を思い出した。

岡田斗司夫の人間4分類

注目型(目立ちたい、びっくりさせたい、王様、親分)
指令型(勝ちたい、目標を達成させたい、指導者)
法則型(勝ち筋を見極めたい、マーケット志向、森羅万象の仕組みを発見したい、参謀)
理想型(職人(芸術家)、究極の型を求める、研究者、技術者)

前後は親和性があり、注目−法則、指令−理想が対立関係にある。

ちきりん氏が指摘する、勝負師、アート、研究者は岡田の4タイプをその時その時で行き来しているように思う。例えば

<4>ちきりん
ART=注目型
MARKET=指令型+法則型
LOGIC=理想型

<6>谷川浩司九段
勝負師=指令型
芸術家=理想型+注目型
研究者=法則型

<7>ちきりん
勝負師=指令型+法則型
芸術家=注目型
研究者=法則型+理想型

てな具合だ。

岡田斗司夫は4タイプが揃うと会社がうまく行くとしているが、典型的な法則型の私としては対立関係にある注目型の重要性がこれまで分からなかった。おそらくちきりん氏も私と同様に金融業界出の法則型で、注目型をあなどる傾向にあると思われる。

なので「アート!?」なのである。

しかし、artが岡田斗司夫を含む日本人が考えているような単に美しい(東洋的な)芸術・美術ではなくて、いままでに無い新しい美を提示して人をびっくりさせる方の(西洋的な)アートとすればしっくりする。

岡田斗司夫は自分自身を注目型の代表と説明していて、私としてはまともな会社に岡田斗司夫はいらんだろと、今ひとつ腑に落ちなかったのだが、ここでソニーの故大賀会長、そしてスティーブ・ジョブスをその代表とみれば(岡田の分類だと理想型と見えなくもない)合点が行く。彼らは製品に美しさを求めたが、本当に求めていたのはびっくりさせること。Think Different. Boon! One more thing. なのだ。

ここで、ジョブスはともかく大賀典雄氏を知らない若い方に簡単にご紹介を。

大賀氏は東京芸大を卒業後、バリトン歌手として活躍しつつあったが、ソニー創業者の井深大氏、盛田昭夫氏から直々に口説き落とされ、入社当初から次代の経営者として特別扱いされていた人物。盛田氏はともかく、井深氏はもともと不思議系の人物で、彼に何かが降りて来ていたのかもしれない。とにかく、ソニーは創業両氏がトランジスタなど革新的な製品を出すことで成長の礎を築いた後、大賀氏がデザインやブランドの面でも世界トップにしたのだ。「SONY」のロゴは大賀氏が自ら手掛けたデザインである。そんな大賀氏のエピソードを当時、社内で広告を担当していた河野透氏はこう語る。


河野透氏は、「タコの赤ちゃん」のCMを作り、「ウォークマン」の名付け親でもあり、ソニーのブランドイメージを発信する広告宣伝を2006年にソニーを離れるまで担ってきた人だ。

*   *   *

ーー大賀さんが仕切っていた当時のソニーのデザイン会議では、新製品のデザイン評価用のモックだけではなく、広告の仮原稿、ビジュアルまで一緒に並べて評価していたというお話しでしたよね。

河野:そうです。今度出す新製品の性能はこれこれで、名前はこれ、デザインはこう、だから広告ではこういうやり方をします、と説明して、後ろにモックアップと広告ビジュアルが貼ってある。

 そこで、スタッフの言い分が何か「まとも」で「ありきたり」だったりすると、大賀さんの大激怒が始まるわけです。もうその場でびりりと八つ裂きです。

ーー企画書を。


河野:じゃなくて、広告のポスター案を。ずかずかスタッフの後ろまで突進して。ポスターを破いて、モックアップをつかみ上げて、床に叩き付けて壊しちゃう。



これは、まるでスティーブ・ジョブスではないか。ソニーというと、どうしても井深・盛田両創業者をまず考えるが、我々が追っているソニーの亡霊は大賀氏が作り上げたイメージにあるのではなかろうか。

こうした注目型は、参謀(法則)型がはびこる官僚的組織からは弾かれやすい。大企業病を患った会社で注目型は居場所を失う。

大賀氏の後を引き継いだ某氏はソニーをGEにしてしまった。彼は指令型としては優秀だったし、時価総額を上げることが彼にとっての勝利であればGE化は悪くない選択だ。しかし、ファンがソニーに期待していたのはサプライズ。マネシタ電器が出す同等製品より20%高くても売れるブランド。コモディティには無い特別な何か。ワン・アンド・オンリー。

結局はその某氏を選んでしまった大賀氏に大きな責任があるのだろう。大賀氏は自分より目立つ人間を選ばなかった、もしくは育てなかったのではないだろうか。そして今、同じことがアメリカの某社に起きているのではないだろうか。ジョブスはクックを選んだ。

しかし、これはサプライズ戦略で大きくなった企業の宿命なのかも知れない。カリスマ創業者の引退が難しいのと一緒(ちなみに金融機関では、あまりカリスマ型の企業に金を貸し込んではならんとされている)。死してなお、ジョブスのマジックは某社を覆っているが、数年で亡霊は消え去る。某社に残された時間は少ない。

アップルには、ニューマシンにSnow Leopardをインストールできるようにしてもらいたいです。Lion以降はクソ。